「よしよし。届いた、届いた」

目の前には大体1メートル位の高さの段ボール箱。つい数分前、配達員のおじさんが運んでくれたものだ。中に入っているのはお手伝いロボットである。先日SNSを見ているときに偶然目にした広告から発見したものだった。『最新型!今だけ!すぐに使える人型ロボットがあなたの生活を支えます!』という文章に惹かれてサイトを読み進めていたら、あと15時間と書かれたカウントダウンの数字が画面上に現れ思わず購入したのである。壊滅的に家事が苦手な人間にとっては素晴らしい商品だ。ロボットといえば数十万円はしそうなものだが期間限定の商品らしく特別価格3万円で手に入れることができた。もう少しで買い損ねるところだったなんて危なかったな。

「思ったより小さいな…。説明書は…っと」

早速箱を開けてみるとこちらを見上げる無機質な目と視線がぶつかる。持ち上げてみると丸いフォルムのロボットの頭部。もしかして組み立てないといけないのかな。

「すぐに使えるって書いてあったのに」

 このロボットが偽物で、自分は騙されてしまったのではないかと心臓がどきどきしてくる。なんとか動悸を抑えて、まあ組み立てるだけなら…と自分に言い聞かせて仕方なく頭部の下に入れられていた説明書と書かれた冊子を開く。まずはロボットの頭部の電源を入れるようだ。ピピっと電子音がして先程まで真っ暗だった目に青いライトが点いた。

「コンニチハ。最新型お手伝いロボット、I-G66AS6をお買い上げ頂きありがとうございマス」

「おわ!びっくりした…。これ喋るんだ…」

「喋りマス」

「おお…会話もできる…」

「会話もできマス。お手伝いロボットですからネ」

この会話ぶりを見るとどうやら本物らしい。不安が現実にならなくてよかった。

「よし。この調子で組み立てるぞ」

 そう思って段ボールの中に手を突っ込む。説明書の下には一枚段ボールの仕切りが付けられていて、この仕切りの下に他のパーツが入っているのだろう、とカッターで仕切りを切り離していく。

「あれ」

 仕切りの下に入っていたのは大量の紙だった。ぐしゃぐしゃに放り込まれたような新聞紙、その辺でいくらでも配られているようなチラシ、そして1番上には請求書。背中をひやりとした汗が伝った。請求書には60万円の文字。60万!?

「来月に右腕のパーツが届きマス」

床に置いていた頭部が話す。

「え、1回で全部届くわけじゃないの」

「ハイ。計10回でのお届けデス」

「しかも60万円って」

「ハイ。I-G66AS6は定期購入が条件となっている商品デス。10回分の代金の合計が60万円となっていマス」

「そんなの聞いてない!」

「きちんとサイト上に表示されていマシタヨ」

いよいよ冷や汗が止まらなくなってくる。60万円という大金の請求が自分に来ていることの実感が少しずつ現れ始めたようだ。広告を発見したときと同様にSNSからサイトに移動する。注文したのは数日前であるため、もしも特設サイトであれば消えている可能性もある。画面をタップして進んでいけば無事に元のサイトには辿り着けた。しかし。

「時間制限が元に戻ってる」

数日前に注文したときには残り15時間で、とっくに終了しているはずのカウントダウンの表示は残り20時間を指していた。なんなら増えてしまっている。そしてサイトに書かれているはずだという購入条件が定期の購入であり、その総額が60万円であることはサイトの一番下に豆粒かというほど小さな文字で記されていた。

「これって返品できたりしないの」

「販売元に電話をかけることが可能デス」

「なるほど」

ロボットに言われた通りにサイトに記されている電話番号にかけてみるものの、一向に繋がる気配はない。

「電話かからないけど」

「それに関しては責任を負いかねマス」

「そんな…」

60万円も払えるはずがない。ただ家事を簡単にしたかっただけなのに…。

「これからどうぞよろしくお願いしマス」

ロボットの頭はその一言を最後にぷつっと音を立てて止まってしまった。目が再び暗くなったのを見て、ついに自分が騙されてしまったのだ、と泣きたい気持ちでいっぱいになったのだった。