『消コンっていうコンテストがありまして……』

パソコンの画面に出されたのはコンテストのチラシだった。

大学の講義がオンラインになってしばらくたった頃。多くの先生は画面越しだと疲れるからと、途中に休憩や雑談を混じえて授業を行っていく。

この教授は早めに講義を終わって雑談をしてくれるタイプのようだ。

教授が告知したコンテストがふと気になり手元のスマホで調べてみた。

「なんだ……消費者トラブルのやつか……」

中学や高校で行われた講演会で耳にタコができるほど聞いた話だ。中身はあまり覚えてないけど。色んなトラブルに巻き込まれるビデオを何回も見た。あんなわかりやすい罠にかかるはずがない。そもそもそんなトラブルに巻き込まれるなんて非日常的なこと、そうそう起らない。

全く関係ないとはいわないが、そんな気にするほどのものでもないと思っていた。

そのままその日の講義は終わり、出された課題に取り組みながら友達と電話していた。

『ここの服すごい可愛くてさー』

友達が言ったのは私もずっと気になっていたブランドの服。

「分かる!でもやっぱ、高いよね……やっぱ可愛いものは高いのよ」

『でもこれ他のとこだとやばいくらい値下げしてるよ』

「他?」

問題を解いていた手を止め、友達が送ってくれたURLでサイトを開く。

「え!めっちゃ安い!80%オフ!?」

『そー!でもやっぱこういうの怖いんだよね……』

ずっと欲しくて、でも高くて手が出なかった洋服。友達も欲しがっている洋服。

ここで買ったらすごいお得に手に入るし、自慢もできる……。

そのサイトに釘付けになった私はもう友達の言葉が耳に入ってなかった。

(買っちゃおう……かな。銀行振込だから自分名義の銀行で払えば親にもバレないし。買ったらこっちのもんだよね。)

サイトの細部なんかよく読まず、かわいい服が安く手に入ることしか、もう私の頭の中にはなかった。

数週間後……

(そういえば、あの服まだ届かないな……)

ふとそう思ったあと、ヒヤリと嫌な汗が背中を伝う。

もう既に銀行への振込も済ませていた。

急いでスマホで例のサイトを検索してみる。

「えっ、サイトがない!?嘘でしょ?」

手元に映し出されたのはエラー表示。

頭が真っ白になっていく。これって消費者トラブルってやつ?嘘でしょ、え、これってどうすればいいんだっけ……まず……まずは……

嫌という程流されたビデオも真剣に見てなくてあまり覚えてない。こういう時に誰が味方になってくれるのかも分からない。

考えがぐるぐる回る。存在しないサイトに対し、エラーを映したスマホをもって立ち尽くしたまま、後悔だけが身体の中に溜まっていった。