「この子、また新しい服買って投稿してる…。同じ高2でしょ??どこからそんなお金でてるの??」
寝る前のルーティーンになっている、SNSを見ながらぽつりと呟いた。
私が見ているのは、女子高生のファッションの投稿。
毎週新しい服やコスメの投稿をしていて、参考にしている人も多い。
絵に描いたような“憧れ”って感じのキラキラ女子。
羨むような眼を向けながら、自分のアカウントをタップする。
「この投稿へのリアクションも無しか~」
私も彼女と同じようにSNSにファッションを投稿しているが、反応はイマイチ。
自分なりにいろいろ工夫してるんだけどな。なにが違うんだろ。うーん…。
やっぱり他の人とちがいをつくるのが大事だよね。注目してもらえるし。
一気に注目を集めるなら…、ハイブランドの服が一番かな。
高校生には買えないくらいの服を投稿したら、注目の的になることまちがいなし!
そのためには、まずお金貯めないとな…。でも今月もピンチなんだよな。どうしよう。
ウチの学校バイト禁止だし、お小遣いの前借りしたらお母さんすごい怒るし……。
「せめて、もう少し安くいいブランドの服が買えたらなぁ。」
そう言いながらSNSを見ていると、1つの投稿が目にはいった。
2万のバッグが5千円になっていたので買いました~!
センスいいものばかりですっごい目移りしちゃいます(>▽<)
ものすごく対応も丁寧で、安心してお買い物できました!!
ノリがよく、気さくな感じの方でしたので、やり取りも楽しかったです!!!
断然ほかよりオトクなので、絶対おすすめです(*’ω’*)
よければ実際のサイトも見に行ってくださいね~~~!!
投稿には有名ブランドのバッグと、URLが添付されている。
これって通販サイトの紹介だよね?5千円はヤバすぎない?
ここならこれまでよりいい服が安く手に入る!SNSでも注目の的間違いなし!
さっそく注文しなきゃ!!
急いでサイトに行ってみると、ラッキーなことにちょうどセールの真っ最中。
どの洋服も安くなっていて80%オフのものもある。
もしかして、すごくツイてるんじゃない??
しかも、商品の中には欲しかったコートもある!
この特徴的なブランドロゴ、間違えるわけがない!
写真撮ったら絶対映えるよね?買うしかないじゃん!
ついでに良さそうな服もまとめて買っちゃお~。安くなってるからたくさん買えちゃう。
サイト内のお客様の声みたいなのもほとんど高評価だし。安心、安心!
「さっそく注文して、振り込みは…明日でいいよね!よし、かんりょ~~!!!」
届いたら何と合わせよう…。今持っているアレもいいし、コレとも合いそう。
困ったら、このサイトでまた買えばいいしね!!すぐ届くんだし。
楽しみだなぁ。絶対みんなに自慢しよ!
これからのことを想像して、ワクワクしながら眠りについた。
しかし、何日たっても商品は届かなかった。
遅れているのかなとも思ったけど、発送は完了してるみたいだし…。
「さすがに不安だから、問い合わせてみるか…。」
サイトに記載されているメールアドレスに問い合わせてみる。
しかし、返信はこない。もちろん商品も。なんど問い合わせても音沙汰なし。
さすがにおかしいと思ったが、サイトにはメール以外の連絡方法が記載されていなかった。困り果てた私は、最初に見たSNS投稿者にメッセージを送ってみることにした。
メッセージを送るために、その人のアカウントを見てみると、あることに気付いた。
「あれ?この人、おんなじ投稿ばっかりしてる……。」
投稿履歴には、私が見たものと同じ投稿が何回も投稿されていた。
不安に思いながらもメッセージを送ってみる。返信はこない。
既に支払いを済ませているので、商品がこないと困る。
日に日に焦る私は一縷の望みをかけ、今回のことをSNSに投稿した。
すると1時間もしないうちに、何件ものメッセージがきた。
「あのサイトに騙される奴まだいたんだwww」
「そのサイト悪質なサイトみたいですよ。高評価で見づらくなってますけど、低評価の人がちゃんと注意喚起しています。サイトちゃんと見ましたか??」
え?なにそれ?そんなことないよ…。だって高評価多かったし、おすすめしてる投稿者もいたんだよ?
そうだ、サイト………、ホントだ、かなり下の方の低評価コメントで注意喚起してる人いる。
最初の方しか見なかったから気付かなかった…。
「なら、私の服は??支払ったお金は???」
わけもわからず混乱していると、SNSにさらに新しいメッセージが届いた。
もしかして、私がメッセージ送った人?と思い、画面をひらいた。
しかし、知らない人からのようだった。
「ちなみに、あんたが見たSNSの投稿もヤラセだと思うよ。投稿縦読みしてみ??」
縦読み??えっと…。
「に、せ、も、の、だ、……よ。」
私は愕然とした。
後からよく調べてみると、あのサイトは偽物の商品を取り扱っているところで、紛い物が届けられること、酷いと商品すら届かないということが分かった。
少し前から同じような被害があったようで、ネットでは有名だったそうだ。
私は一気にどん底へと落された気分になった。
ハイブランドだからと、奮発して貯めていたお年玉まで使ってしまった。
終わった…。どうしようもない。親に言っても怒られるに決まっている。もうお小遣いもらえないかも。もっとよくサイトを見るべきだった…。調べればよかったんだ。
私が今にも泣きそうになっていると、軽快な音とともにスマホが明るくなった。
通知を知らせる欄には、
「もし、困っているならここに連絡してみてください。」
という簡単な文と“188”の数字。
なんだろうと思い調べてみる。こんなところがあるんだと驚き、スマホを手に取る。
「………というわけで、ここに連絡しました。どうにかなるんでしょうか。」
今回、お金は戻ってこないかもしれない。それでも相談することで心は軽くなった。
消費者ホットライン。私の最後の希望はここだと強く実感した。